昔、居た猫の話。続き。
クローバーが亡くなったのは、もう10年ほど前の事だ。
実家に戻り、働き出していたその頃の僕は自分の日々の生活に精一杯で、少しずつ弱る彼を直視できずにいたと思う。
老いとともに今までにない行動をとる姿は、悲しいや苦しい、せつない、どれもぴったりと表現できないなんとも言えない気持ちにさせた。
亡くなった当日も仕事だった僕は夜帰宅すると母が落ち込んだ表情で、クローバーの看取りをしていた。
その数ヶ月前からは、病院でも薬をもらったりしていたが、先生から暗に寿命ですからというような扱いをされたように覚えてる。
ぐったりの横になっていた彼は前脚だけで這うようにトイレに行こうとする。
「もうここのお布団でしちゃっていいのよ」そう言ってクローバーを撫でる母は泣いていた。
僕は何も言えず、何もできないでいた。
何も考えられず泣く事もできずぼんやりとクローバーを見ていることしかできなかった。
それから数十分後、彼は息を引き取った。
「ハシタニが帰ってくるまで頑張ってたんやね」母が言った。
「今日はクローバーと一緒に寝ようか」母の提案で2人と一匹はリビングで川の字なりその日は眠った。
明け方ご飯をせがむ声が聞こえてはこなかった。